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書籍紹介 ジェンダーと部落問題を考える

『めざめる女 つぶやく男
―富田林・発:ジェンダーエッセイ集』

ジェンダー・学び・プロジェクト・編

「めざめる女 つぶやく男」(ジェンダー学び・プロジェクト編・解放出版社 1,400円+税)

「めざめる女 つぶやく男」(ジェンダー学び・プロジェクト編・解放出版社 1,400円+税)

 本書は、副題にもあるように「ジェンダーエッセイ集」である。しかも、作品はすべて公募によるものだ。
 こうしたエッセイが募集され、エッセイ集として発刊されるに至った経緯については後述することにして、まずは、素晴らしい作品のほんの一部を紹介しよう。
  「今日はオフィスに一人きり・・・他の課のオジサンがやってきた いちおう笑顔で『こんにちは』『なんや今日は誰もおらんのか』オジサンは去っていった・・・」(勿忘草「透明人間」)
 「・・・人は彼を『理解ある夫』と呼ぶらしい。それって、何だか変だなあ。私も、『理解ある妻』だよね?そうよ、貴方の仕事の良き理解者・・・」(竹中信子「GO SYU JIN SAMAとWATASHI」)
 「・・・女性が社会に出て働くということは、こんなハンディを背負われているということなのだ。しかも、夫という、自分のことは何もしたがらないという足かせまでつけられたら、二重のハンディだ。・・・」(大橋幸子「奥さんが欲しい」)
 このエッセイ集発刊の発端は、1995年春に富田林市立中央公民館で実施された「女性学講座」。やがて受講生を中心に自主サークルが生まれ、富田林市庁内でも研究会が立ちあがるなど、独自の取り組みが始まった。こうした土台がないと、この手のエッセイ集は完成までこぎつけないのが現状なのだという。
 多くの方々の尽力によってようやく日の目を見たこのエッセイ集であるが、とにかく、目からウロコの斬新な指摘、思わずうなるような鋭い主張など、応募者の多様な視点、豊かな感性が伝わってきて面白いので、是非ご一読いただきたい。


松本治一郎』
福岡県人権研究所・編

「松本治一郎」(福岡県人研研究所編・西日本新聞社 1,500円+税)
「松本治一郎」(福岡県人研研究所編・西日本新聞社 1,500円+税)

 戦前・戦後を通じて部落解放運動の主導的立場を担い、自由と人権の確立を訴え続けた松本治一郎は、「解放の父」として、今も慕われている。
 福岡県人権研究所が主催する「松本治一郎プロジェクト」によって編まれた本書では、彼の波乱に満ちた生涯が、新発見の史料や証言も交えながらわかりやすく紹介されている。
 1887(明治29)年、福岡県に生まれた治一郎。幾多の経験を重ねることで、差別を憎み、不正を許さない人格が形成されたという。1923年、全国水平社の呼びかけに応じて全九州水平社の結成に尽力して以後は、1966年に79歳で亡くなるまで、常に部落解放運動の第一線で活躍した。
 その間、1926年の福岡連隊差別糾弾闘争、1933年の高松結婚差別裁判糾弾闘争など、被差別部落住民の人権確立を求める闘いを展開。戦後は国会議員を務めながら、部落解放運動を指導する一方、世界の水平運動を提唱して、アジア・アフリカの被抑圧者解放のために努力した。
 本書では、このような治一郎の歩みが、治一郎のことを知らない人にも分かりやすいように説明されており、彼を通して、戦前・戦後の部落解放運動史を学ぶこともできる。
 また、随所に挟み込まれた「素顔・横顔」と題するエピソードでは、解放運動の闘士という側面にとどまらない、暖かみのある「人間・松本治一郎」の姿が浮き上がってきて興味深い。
 治一郎が信条とした「不可侵不可被侵(おかさず、おかされず)」の精神には、自分の権利を守るためにはまず、自分自身が他者の権利を侵さない、という気持ちが込められている。差別の在り方が多様化している現在、わたしたちはもう一度この精神に立ち返って、自分の足元を見つめ直してみる必要があるのではないだろうか。

 

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